じっくり向き合えば向き合うほど、言葉にするのが難しいものをたくさん投げがけてくる物語「獣の奏者」
獣の奏者シリーズ、ようやく読み終わったー。
「鹿の王」が映画公開もあるからそっちも読みたい、けど獣の奏者読み始めちゃったから、浮気はせずにしっかり読みたい。の気持ちでじっくり読んでたら年末になっちゃった。今年中に完結まで読めてよかったー。
自然や場面の描写が精緻で、頭の中で季節感や時間帯、温度や湿度、空気感までしっかり作りこんでこそキャラクターが実際に生きる物語。
だから逆に、自分が忙しかったり疲れてたり気が散ってたりすると世界に集中できなくて読み進められないタイミングもあったなぁ。
まず、エリンのお母さんとのシーンが衝撃的で、ジョウンおじさんの元に落ち着くまでがしんどかった。
2巻はもうエリンが王獣と心を交わしていくところから物語の吸引力がすごくて読む手が止まらなかった。クライマックスから、ラストシーンの印象が一番強い。
胸ぐら掴んで締め上げられてるような気分で読んだ「大いなる災い」のシーン。世界や自然を美しく愛おしく脅威的な筆致で描く上橋先生の、こういう、自然がどうしようもなく牙を剥くシーンの描写が本当に圧倒される。思い出してみれば、精霊の守り人シリーズもそうだったなぁ。
そして外伝。エリンの母ソヨン、エリン、師エサル、3人の女性たちの物語を紐解くと、そこには人の、生き物としての営み、人を愛し、命をつなぐことへの向き合いがある。
じっくり向き合えば向き合うほど、言葉にするのが難しいものをたくさん投げがけてくる上橋菜穂子作品。
ただファンタジーとして面白い、だけじゃない、
これらが「どんな物語だったのか」向き合うたびに、
読む側が人生の中で何を経験したのか、
人生のどの時期にいるのかで
見えるものがどんどん変化していく物語なんだと思う。
読んだ、どう思った、を即座にアウトプットしておしまい、とはいかないのが、この作者さんの紡ぐ物語なんだよなぁ。
アニメにもなってるんだけど、今(2021/12/31時点)配信もしてないし視聴する術が見当たらないんだよな…
本シリーズの読書BGM。WHITE ASH4thアルバム「SPADE 3」
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次は「鹿の王」シリーズを読みたい。
映画は来年2月公開。