「見上げるな」とは?「ドント・ルック・アップ」を見逃すな
2022年の一本目として見るにふさわしい抉り方をしてくる映画だった。お正月に見たい!とは言いがたいけど。(ネタバレあり)Netflix映画『ドント・ルック・アップ』2021年12月24日(金)より独占配信開始
正直、面白いというか、現実に起きた場合こうはならない、とは言えない嫌らしさがエグい。
単純に笑えるコメディじゃないし、胸糞悪く感じる部分でいっぱいだけど、興味深いという意味で大変面白い。
真剣であればあるほど茶化されイジられバカにされるネットの風潮抉ってくるし、
伝える内容より伝える人に
- 好感を持つか
- どんな印象を持つか
- 相手に共感するか
- 心酔してるか
- そもそも発言力があるか(メディアにおける声が大きいか否か)
で情報を信じるかどうかを判断する問題の皮肉。
情報リテラシー とは
ニュースでの話題の取り上げられ方も、
下ネタ並の政治ゴシップ
芸能人の恋愛沙汰
の次に
科学的な話題(しかも極めて個人的な笑い話にどんどんすり替えられる)
っていうのが、もう見ていて嫌になる程今のメディアやネットニュースの傾向を皮肉ってるなぁ。
鑑賞してて、なんかもう見ていられないって気分にどんどんさせられる。
大統領が彗星の発表をするシーンで打ち上がる花火の白々しさとか、
IT企業の口車に乗せられて彗星への対応がグダグダになっていく感じとか、
それらに対抗しようとする科学者サイドの運動も完全にただの政治運動にしかなってなくて、
刻一刻と迫ってくるタイムリミットに対し実際に行動を起こしている組織や人間たち(作中では米国の企業の利権競争から占め出された中露印)の姿が作中全く描かれてない(主人公たちがその活動にまったく関わっていなくて失敗の報告だけがもたらされる)のも、
とにかく
一人一人の無力さ、
目的と行動が一致しない空々しさ、
一部のカリスマの盲目的指針に振り回される世界の滑稽な悲しさ、
極限まで細分化された情報化社会における発言力、
グローバルに展開されつつも平行化して孤立する世界、
と現在見ておくべき作品としてピカイチの脚本だった。
ここまでの豪華俳優陣が参加しているのも納得。
脚本上悪役のポジションにいるのが全員白人、メリル・ストリープが女性大統領として出演している点も。
好き嫌いは一旦横に置いておいて、自分たちが生きてる時代はこういう時代なんだってことをきちんと認識して、
これをブラックユーモアとして笑うと同時に、自らもこういう時代の一部なんだって事実を嫌悪したい。
-蛇足その1
作品の最後に一部の人間たちが脱出機で地球外に逃げ延び新たな惑星を目指すが…
- 定員が2000人
- 冷凍ポット内での生存期待率が約50%(もしくはそれ以下)
- 乗客は世界の金持ち層と思われ、平均年齢が極めて高く見える
さて、人類は移住先の惑星で存続が可能なのだろうか?
-蛇足その2
ドローンが命名プリモ1世って、なぁ…
かつての「家庭教師ヒットマンREBORN!」読者としてはこのネーミングセンスに頭痛が痛いと同じ何かを感じるよ…
(プリモ=イタリア語でファースト、1世を意味する)