毎日が清水の舞台

自己肯定感が低いゆえに毎日が挑戦の日々

究極の密室に詰め込まれる世界の歪みと希望と絶望 映画「リミット」

はっはー、埋められた棺の中っていうめちゃくちゃこれ以上狭くできないだろうな密室劇だって聞いてたから、もっと静かに淡々と進むかと思ってたんだけど、緩急がしっかりついてて全然退屈せずに見れたよー。

部屋真っ暗にしてヘッドホンかイヤホンで周囲の雑音遮断して観るべき。

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主演のライアン・レイノルズが棺の中でひたすら電話したりもがいたりする映画なんだけど、「名探偵ピカチュウ」のピカチュウでも有名な顔芸俳優だもんだから、ほとんど身動きとれない映画なのに感情がダイレクトに伝わってくる。

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真っ暗闇の中で身じろぎと呼吸音だけのシーンや呼吸音すらほとんどしないような闇のシーンと、
音楽がセリフをかき消すくらい大きく入って電話相手への焦燥でパニック状態の表現の対比がいいテンポを作っていて飽きなかった。


ポールがあちこちに電話をかけては話が通じない!ってなって次から次へとたらい回しにされて(むしろ当人が焦りで自分をたらい回して?)るところなんか、現代の担当部署が細分化かつ多すぎて困った時に誰に助けを求めても一発では解決されないイライラする感じを連想する。

イラクから電話してるはずなのにアメリカの警察署に直にかかるあたりのシュールさ。グローバルであるが故の物理的な距離を無視する弊害。

繰り返し身内に連絡を入れても留守電ばかりでなかなか直接話せない虚しさも、地球には時差があるんだって現実を思い出すことなくポールの焦りを煽る。

 

ポールの撮った人質ビデオがYouTubeで数十分で数万再生もされて、外の世界では一躍時の人となっているはずなのに、当人にはなんの助けにも慰めにもならない。それでいて、たった数秒の個人発信の動画が国際問題にもなりうる。SNSの評価に一喜一憂してる現代人への皮肉がここでチラリ。

 

会社がインタビューの録音を許可するかって言ってきた時点で、責任逃れのための証拠づくりかな〜とは思ったけど、これはヒドイ。人質になった2人の自己責任スキャンダルとして事前解雇をでっち上げるとか「死人に口無し」か。都合の悪い状況をトカゲの尻尾として切ってしまう企業の醜悪さ、使い捨てられる被雇用者の絶望。

 

水平方向に遠ざかるカメラは今現在の自分が世界から隔絶され見捨てられる絶望感、

地の底に落ち込んでいくように遠ざかるカメラは人生を否定され未来をも見捨てられた絶望感、

と繰り返される絶望をカメラのパン方向を変えることで絶望は一つじゃないと表現してくるのも秀逸。たった90分の中で何回、何種類の絶望を味わうのか…

 

何度も絶望しながらも、外部からの脅威に対応、反応することでなんとか生に執着し続けるポールは、結局助かるのか?

 

ラスト10分に詰め込まれる怒涛の希望と絶望の交錯。助かる?助からない?
「スタッフロールの最後まで、見届けなくてはいけない」映画。

 

そして、「マーク・ホワイト」とは誰だったのか?

 

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大掛かりなアクションやスペクタクルばっかりが面白い映画とは限らない。

見応えある密室劇なら、このあたりがおすすめ。


密室もの + 一人芝居

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複数人での密室もの

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