毎日が清水の舞台

自己肯定感が低いゆえに毎日が挑戦の日々

映画「パッセンジャー」SFでロマンスでスリリングで……議論のお時間です。

SF映画パッセンジャー

予告からしてとにかく面白そうだったのを、ようやく落ち着いて観れた。

 

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宇宙コロニーへの120年の航海の途中で冷凍冬眠から起きてしまった乗客の男性。

冷凍睡眠に戻る方法はなく、コロニーに到着しクルーや他の乗客が目覚めるのは90年後。

たった一人、90年間を宇宙船の中で生活することを余儀なくされ……

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まず最初結構手当たり次第にあちこちこじ開けようとしてるの、びっくりする。

 

オーロラを目覚めさせるまでにジムは丸一年独りで過ごして、アンドロイドバーテンダーのアーサーという話し相手も(一応)あり、娯楽に没頭して自堕落な生活もしたけどやっぱり孤独は孤独だった。

 

 

オーロラは目覚めてから早々にしっかり自己管理された生活パターンに落ち着いてるあたりが、彼らの乗員クラスの違いとシンクロしてる感じ。

 

欧米では、心身の状態をきちんと自己管理できるのが社会人として基本だとされる。

食生活、運動、精神の健康も自己管理の範疇。

管理ができない人間は仕事でも評価されない。

 

オーロラは作家としてある程度成功しているようで、著作も複数出版されインタビュー動画も豊富に存在しているセレブに分類されている。

 

ジムがエンジニアっていうブルーカラー、しかも当人が

「地球では壊れたら即交換、コロニーでは修理が必要だから俺の仕事(がある)」

と言っていることから、地球では需要が下がっている職種であると思われ、社会的に地位が低く乗客として最低ランクに分類されていることと、無関係な描写だとは思えない。

それでも、実際に宇宙船が異常をきたした時に、機体の構造に向き合い手を動かし、前線で対応するのはジムなのだよなぁ。

 


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孤独に耐えかね、オーロラへの恋情が限界点を超えたとはいえ、ジムはオーロラを冬眠から目覚めさせ、人生を奪った。
そこがこの映画の一番の議論点なんだけど。

 

そもそもジムはポッドの故障で最初に人生を奪われた。

自分の境遇に絶望しやりきれない思いを抱えることになった点はオーロラと同じだった。

じゃあ、被害者であるジムが、加害者になることは許されるのか?
被害者が被害にあったこと、苦しんだことを免罪符に加害者になることは、正当化できるか、否か。

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そんなん許されんわって理論や倫理で断ずることはできるけど、それで割り切れないものが人間にはあるから、いつだって議論すべき問題なんだよなぁ。

 

人間は終わりのない孤独に耐えられるのか?

しかたなく加害者になってしまった人間を許すことはできるのか?

 

許すことが愛なのか?

許すことが是なのか?

 

ロマンス要素も含んだ本作、二人の辿り着いた結末は……?

 

 

宇宙を旅する描写が美しい。

宇宙SF映画はたくさんあるけど、この作品で描かれる宇宙は荘厳でドラマティック。

過美に走らず、冷たい宇宙にあって熱く神々しく、見方によっては優しくさえ見える。

こんな景色を眺めながら過ごすなら、一生を船で過ごすのも悪くないんじゃないかと思わせる魅力的な宇宙だ。

 

 

宇宙で孤独に生きなければならない系映画なら、もちろんこれ!

 

宇宙空間で人工知能相手に長い時間を過ごす映画だったら、こっちもおすすめ。

宇宙に独り、は、自らの選択の結果なのか?それとも、彼もまたとらわれているのか?